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2017.04.04 掲載 2023.11.02 更新

日本企業には販売・物流管理というフレームワーク構築とビジネスモデル・プロセス再構築が必要

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■販売・物流管理という視点が欠落した日本企業は競争力が低下していく

日本企業はかつてない苦境に陥っています。世界の奇跡と言われた高度経済成長も今は昔。失われた20年などと言われ、低迷の時代です。
私が連載しているコラムで何度も書いていますが、時代が大きく変わったにもかかわらず、日本企業の改革は高度経済成長時代に有効だった手法にいまだに頼ろうとしています。状況が変わったのに当時と同じ手法を繰り返しても、効果は限定的でしょう。かえって事態を悪化させるかもしれません。「作れば売れる」時代の手法や個別組織の効率化の積み上げは有効ではないのです。
しかし、日本企業は、組織横断的な問題解決が苦手です。大きな方向性を描き、組織そのものの在り方を描きなおし、他を圧倒する競争力を構築するといったことができないのです。
大きな絵を描いて改革するには、フレームワークや方法論が必須です。まれに天才的な創業者が独創的に、あるいは試行錯誤的に驚くべきモデルを構築することがありますが、普通である我々は、それなりの思考の道具を持ってコンセプトデザインができないと、改革案の策定や効果検証さえできないのです。
しかし、身近にあるのは、過去のある時期に、ある企業でうまく行ったという個別事象の個別手法ばかりです。思考の道具として抽出されたフレームワークがないのです。それはまるで、普遍的な戦略・戦術のフレームワークがなく、「鵯越だ」、「桶狭間だ」と、個別事象のマネしかできなかった時代のようです。
※注 鵯越(ひよどりとうげ:源平合戦 一ノ谷の戦い)、桶狭間(おけはざま:織田軍と今川軍の合戦)
いまだに多くの企業に伺うと「うちは特殊だから」とばかり言います。まったくそんなことはありません。販売、物流、生産、調達、会計、計画と切り出していけばその核となる部分は普遍的で、一般的なのです。実際、販売、物流、生産、調達、会計、計画の業務プロセスのありようと関係性を上手にデザインして繋ぐことで、驚くほどの競争力と効率を手に入れられるのですが、そうした指向性は持ち合わせていません。
一歩、日本の外に目を移すと、先進国企業も新興国企業も競争力を意識した革新的なビジネスモデルやビジネスプロセス、企業連携や組織機能配置を実現しています。最新テクノロジーを活用し、改革を推し進めています。かつて先進的だった日本の企業は、いまでは時代遅れになってしまいました。
今回は、特に販売・物流管理という領域での問題に触れます。先進企業ではコンセプト化されている販売・物流管理という考え方が日本企業に欠落しているのです。結果、競争力がなくなって、売上・利益が伸びない状態に陥っているからです。
しかも、販売・物流管理のコンセプトがないので、事業を俯瞰してモデル化し、モデルを変えることで現実を改革・改善していくことがまったくできなくなっています。結果、先進企業の後塵を拝し続けるしかなくなっています。
 

■販売・物流管理を一体で構築してくる外資企業の躍進

身近な例をあげましょう。
販売・物流管理という視点が乏しい企業が大勢になっている日本市場に対し、「売る」ことと「届ける」ことを一体で考えている海外企業が参入することで、市場が大きく揺さぶられています。書籍のネット販売から始まって、今ではたくさんの商品を扱っているアマゾンなどがその典型でしょう。
アマゾンについては言い尽くされているので、詳細は書きませんが、彼らのビジネスモデルはB2C(Business to Customer)における顧客購買活動と自社の販売・物流プロセスを一体化させ、顧客を囲い込むことを目指しています。B2Cの販売・物流管理として考えられる、商品探索、販売、決済、配送、顧客情報の蓄積といったすべてのプロセスがモデル化され、連携し、顧客がストレスなく買い物ができるプロセスが構築されています。
商品探索、販売、決済、配送、顧客情報の蓄積は、ひと回りして、再び商品購買推奨を含む商品探索に戻るループを描いています。このループが、小売りにおける顧客接点すべてを囲い込んでいるのです。この囲い込みを行うために、アマゾンは資金を投じ、仕組みを構築したわけです。
私は今となってはほとんどアマゾンで買い物しませんが、今でもかつて購入した商品の類似品の購買推奨メールが来ます。メールに反応してサイトに飛ぶと、商品探索のスピード、正確性、可視性が優れていて、一発で欲しい商品や関連する商品が探索できるのです。また、決済までの流れがストレスなく、そして配送が早い。
これはアウトソーシング先の宅配業者の質の高さのおかげでもありますが、そうしたストレスのない配送を構築する努力はかなりされています。まさに、売ることと届けることが一体でデザインされているのです。これで躍進しない方がおかしいくらいです。
一方、日本企業がやっているのは顧客を囲い込むどころか、バラバラのプロセスに嫌気がさすような設計です。
販売は販売で店舗が頑張り、顧客に依存しています。配送は持って帰ってもらうか、宅配に頼むこともできる程度の選択を顧客にまかせ、物流がサービス上の競争力だとはいまだに思わない。
決済は現金か提携カードですが、顧客の決済履歴や買い物履歴の蓄積がなく、次の購買を誘導する仕組みが皆無。逆に誰向けかわからないような不要なDMが送られてきてゴミが増え、商品探索や店舗選択にはなんの影響力も与えられていません。
アマゾンは、販売・物流一体で、顧客の購買経験(カスタマー・エクスペリエンス)を蓄積・分析し、次の購買行動にどう移ってもらうか、買い物のストレスをなくし、買うことの満足を積み上げるための物流、決済をどう作るか、ということが有機的にデザインされているのです。
 

■販売・物流管理を一体で構築することで売上・利益を増やし競争力を強化する

個別組織単位に業務が作られ、全体をつないで顧客への訴求を行い、競争力を強化するという視点に欠けた日本企業は、どんどん置いていかれています。改革するためには、顧客接点において、自社の組織も含め効率的かつ高サービスのプロセスをいかに設計するかにかかっています。
そのためには、顧客接点を起点として業務プロセスを切り出し、各プロセスを顧客が望むサービスレベルと効率実現に向けて連携して描き切り、構築することが必要なのです。
自社のマーケティングから顧客購入、さらに購入時の決済プロセスまでを描き、同時に顧客への配送・着荷までのプロセスを描き、描いたプロセスを販売・物流管理プロセスとして整合性をとって設計していきます。
具体的に考えてみましょう。ビルの内装材を作っているメーカーがあるとしましょう。こうしたメーカーでは、コンペが来てから動いていてはなかなか勝つことができません。しかも、コンペでは、買いたたきや短納期での厳しい競争を強いられます。そうした受け身でのビジネスは儲かりません。
顧客を囲い込んで高く買ってもらうには、顧客の何・どこ(のプロセス)を支援していけば高い付加価値が提供でき、受注確率が高められるかを考えるのです。
たとえば、それは設計会社の買収・設立かもしれません。あるいは企画会社を作り、ゼネコンや施主の企画段階から入り込み、企画者として物件建設の上流プロセスを押さえることかもしれません。
その後は、商談プロセスを精緻化し、商談管理をしながら、商談獲得の確度に応じて制約になるキー原材料を先行購入します。その後工事日が決まり、仕様確定した段階で初めて製造することで、製品在庫なしで、かつ納期通りに製品を届けるといったプロセスを描き切ります。顧客の建築プロジェクトと企画段階から並走するという自社の販売・物流管理プロセスを構築することができるのです。
これは架空の例ですが、今でも日本企業の多くは個別組織が個別に闘い、組織横断で販売・物流管理プロセスを描いて、こうした顧客を囲い込むプロセス設計をしていません。販売・物流管理のフレームワークを構築して、競争力を強化する余地はまだまだ残されているのです。

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ライタープロフィール

石川 和幸

経営コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

石川 和幸

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