地方がおかれているリモートワーク事情:大阪、福岡、愛知(名古屋)などの地方主要都市の企業の場合

 

新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言による外出自粛をきっかけに、従来の働き方は大きく見直されつつあります。
特に東京都など感染者数の多い地域では、コロナ禍を期にリモートワーク(テレワーク)導入を急遽進めたという企業も多いのではないでしょうか。
では、東京都を中心とした首都圏に次ぐ経済基盤をもつ、大阪府、福岡県、愛知県では、どれほどテレワークが導入されているのでしょうか。
2020年7月時点の3府県のテレワークの現状や取り組み、地方企業が求められるウィズコロナ時代の働き方についてご紹介します。

 

テレワークが進んでいるのは東京だけ?

コロナ禍でクローズアップされたテレワークですが、実際にはどの程度実施されているのでしょうか。
また、地域や企業規模による格差、業界業種による実施率の違いはあるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。

地方vs東京、テレワーク実施率の比較

参照:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

 

パーソル総合研究所の行った調査によると、テレワークの全国実施率は27.9%(4月調査時点)。同年3月の数値13.2%と比較すると約2倍の実施率となっており、企業のテレワーク導入意識が急速に高まってきた様子が伺えます。
都道府県別では、東京都が49.1%と最も高く、神奈川県、埼玉県、千葉県など東京都と隣接する首都圏でも軒並み30%以上と高い数値を記録しています。
しかし、全国実施率の平均値を上回るのは、首都圏と大阪府のわずか5都府県のみ。その他の地域では全国平均値を下回っており、32道県が普及率15%を切っているという現状もあります。
コロナウイルス感染者数も多く、否が応でもテレワークを進めなくてはならなかった東京都や東京近隣県の企業と、地方に拠点をおく企業では、テレワークに対する認識に大きな差があると言えます。

大企業と中小企業、企業規模で導入率に大きな差が

テレワーク導入率は企業規模によっても左右される傾向があります。
総務省が行った「平成30年通信利用動向調査」によると、従業員2,000人以上の大企業におけるテレワーク導入率は46.6%。約半数の企業がテレワークを導入しているという結果になりました。

おおむね従業員規模が多いほどテレワーク導入率が高い傾向にあり、従業員数300人未満の中小企業(導入率14.5%)と2,000人以上の大企業では、テレワーク導入率に約3倍の差がありました。
東京オリンピックの開催や働き方改革により、コロナ禍以前から精力的にテレワークを推進してきた大企業に比べると、中小企業は後れをとっていることがわかります。

テレワークに向いている業界、不向きな業界

テレワーク実施率を業界ごとに見ていくと、通信、放送、インターネット関連企業などの情報通信業界、シンクタンクや法律事務所、税理士事務所などを含む学術研究、専門・技術サービス業界などが45%から50%前後と高い水準を示しています。
一方、医療・介護・福祉業界、宿泊・飲食サービス業界、卸売・小売業界などの数値は5%〜15%と低い数値を示しています。主として対面での診療や治療、ケアが求められる医療・福祉業界や、対面でのコミュニケーションが重要な宿泊、飲食、小売業界などでは、テレワークの導入が事実上困難であると言えます。
また、運輸・郵便業、製造業、建設業など、大規模な機械装置や、複数人での作業が必要な業界でもテレワークが進みづらいという現状があります。

業種によっても変わるテレワーク導入率

Webデザイナーやプランナー、IT技術職など、ITとの親和性が高い業種はテレワーク実施率が高い傾向にあります。
また、近年では多種多少なクラウドサービスが登場しています。それらをツールを積極的に活用することで、総務、人事、経理などのバックオフィス業務や営業、広報、マーケティング部門などでもテレワーク導入率は上がってきています。
しかし、介護士やヘルパーなどの福祉系専門職や、ドライバー、製造現場や建築現場での作業員、接客サービス系の業種については、テレワーク実施率が10%を切っています。
テレワークに不向きな業界の項でも触れましたが、やはり、対人コミュニケーションが強く求められる業種や、出社しなければ全く作業ができない業種については、テレワーク導入が難しいと言えるでしょう。

 

地方主要都市の企業がおかれているテレワークの実態

次に、主要都市(大阪府、福岡県、愛知県)におけるテレワークの実態についてみていきましょう。3府県の産業の特徴とテレワークの現状について解説します。

大阪府の場合

まずは大阪府の場合をみていきましょう。

◆大阪府の産業の特徴

府内に立地する大企業の数が東京都に次いで多い大阪府。中小企業の数も東京に次いで多く、「中小企業の町」とも言われています。
主要産業は、卸売業・小売業と製造業で、府の売上高全体の約8割を占めています。両業界とも、繊維、衣服、生活用品、医薬品、機械、金属など幅広い業種を扱っています。
また、堺泉北臨海工業地帯や阪神工業地帯など複数の工業地帯に、高いものづくり技術を持った企業が数多く集まっているのも特徴です。

◆大阪府のテレワークの現状

大阪府のテレワーク実施率は2020年4月現在で29.1%。同年3月からは15%以上上昇し、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に次ぐ実施率となりました。
テレワーク導入の支援策として、府ではテレワーク導入セミナーを開催しました。また、市ごとに独自の取り組みも行っており、行政が管理運営するテレワークオフィスを開業したり、導入支援金を設けたりと、テレワーク普及に力を入れています。

福岡県の場合

続いて、福岡県について紹介します。

◆福岡県の産業の特徴

東京、大阪、名古屋に次ぐ経済都市圏である福岡県。農業、漁業、林業など恵まれた環境を生かした第1次産業、北九州工業地帯を中心とした第2次産業、福岡都市圏を中心に広がる商業やサービス業の第3次産業まで幅広い産業が根付いています。特に、第3次産業のウエイトが高いのが特徴。全産業の約8割を占めており、近年ますますその割合が増加しています。
また、福岡市、北九州市は国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されており、新たなイノベーション創出や、スタートアップ企業の創業支援や起業支援などにも力を入れています。

◆福岡県のテレワークの現状

福岡県のテレワーク実施率は2020年4月現在で23.8%。4月7日に発表された緊急事態宣言対象7都府県の中では最も低い実施率でした。
コロナ禍を受け、県独自のテレワーク導入支援金制度を設けたり、新たな雇用を創出するためのの「テレワークによる障がい者雇用促進セミナー」を実施したりと、テレワーク導入やスムーズな運用体制を整えるための取り組みを強化しています。

愛知県(名古屋)の場合

最後に、愛知県の状況を紹介します。

◆愛知県(名古屋)の産業の特徴

トヨタ自動車やデンソーなど自動車産業のイメージが強い愛知県。自動車産業の他にも、航空宇宙産業や鉄鋼・特殊鋼産業、セラミックス産業、電気機械産業など多くの分野で高いシェアを誇っています。経済産業省の「2019年工業統計概要版」によると、愛知県の製造品出荷額は全国の約14.7%を占め、第2位の神奈川県を大きく引き離し、42年連続で第1位を獲得しています。
工業のイメージが強い愛知県ですが、商業や農業でも全国的に高い水準を誇っており、全体的にバランスの取れた産業構造となっています。

◆愛知県(名古屋)のテレワークの現状

愛知県のテレワーク実施率は2020年4月現在で19.7%。同年3月から10%以上上昇したものの、全国平均を下回る結果となりました。
以前からテレワークに対する取り組みを進めていた愛知県ですが、コロナ禍をきっかけ以下のような新たな取り組みも開始し、テレワーク普及率の向上に努めています。

・テレワーク導入マニュアルの作成
・中小企業の経営者や実務担当者を対象としたテレワーク導入、運用のためのオンラインセミナー「テレワーク・スクール」の開催
・テレワーク導入ノウハウや知識を有するワーク・ライフ・バランス普及コンサルタントの無料派遣

 

地方企業に求められるこれからの働き方とは?

東京をはじめとした首都圏や大企業だけなく、地方企業や中小企業においても今後テレワーク導入はますます重要になることが予想されます。
では、地方企業や中小企業がテレワークをスムーズに導入、運用していくためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

柔軟な制度適用

テレワークは、会社単位で一律に制度導入するのはなく、業務特性などに合わせて柔軟に導入していくことが重要です。
地方企業に多い、製造業や建設業、小売業や宿泊飲食サービス業などは、テレワークに向かないという点は否定できません。しかし、これらの企業の中にも、バックオフィス部門や営業部門など、テレワークにフィットする部門はゼロではないはずです。
まずは、テレワークとの親和性の高い部門から取り入れ、段階的に取り組みを進めいていくことが成功の鍵です。

評価視点の見直し

日本では、業務成果だけでなく、やる気や貢献度などプロセスが重要な評価視点となる傾向が強くあります。しかし、テレワークでは、社員一人一人の勤務態度や意欲を管理、評価するが従来の働き方と比べると難しくなります。
そのため、テレワークを導入する際は、この評価視点を見直す必要があります。プロセス重視の評価制度から、成果を元にした評価へシフトしていくことが必要となってくるでしょう。
また、同時に管理職社員の意識改革も必要です。従来の評価制度のままだと、テレワークを導入しても、きちんと働いているか、サボっていないか、コミュケーションがきちんと取れているかなど、部下を管理することに目がむきがちです。
テレワークにおいて求められる管理職の役割は管理ではなく「マネジメント」です。部下が目指すべきゴールを設定し、やる気を引き出す、目標に対する達成状況を確認し、個々人の状況に合わせて内容を修正していくことが、テレワーク時代の管理職には求められます。

デジタルトランスフォーメーションの推進

テレワーク導入の際には、社員がどこにいても業務を遂行できる環境を整備することが重要です。円滑なテレワークのために特に重要なのは、ペーパーレス化と押印の廃止ではないでしょうか。
実は、筆者の勤める企業※1でも、コロナ禍でテレワークの導入が検討されました。しかし、書類はほぼ紙で保管、個人情報の観点から資料等の外部持ち出しができない、重要書類には押印が必須という企業文化のため、結局テレワークの導入は実現しませんでした。例えテレワークが導入されていたとしても、書類の閲覧や押印のために出社を余儀なくされていたことでしょう。
ペーパーレス化は、テレワーク推進のためだけでなく、BCP対策やコスト削減などにも有用です。
また、電子署名や電子契約などのサービスも注目を集めています。電子署名や電子契約には、法的証明力がある、改ざんができない、印紙代も不要とメリットも多いので、今後より普及していくことが予想されます。

※1 筆者が働く企業はNOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社とは関係ありません

クラウドサービスの積極的な導入

総務省の「令和元年度情報通信白書」によると、クラウドサービスを利用している企業は、58.7%。テレワーク同様、大企業ほど導入率が高いという結果がでています。
テレワークを推進する上で、クラウドサービスの導入は欠かせません。例えば、zoomのようなWeb会議ツールを利用すれば、客先に出向かなくても商談ができたり、遠隔地にいる人材と採用面接を行うことが可能だったり、テレワークでできる業務の幅はぐんと広がります。
クラウドサービスは、無料で使えるツールもたくさんあります。
また現在、国や自治体がテレワーク推進に向けての支援策を積極的に打ち出していますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

東京都と比較すると、大阪府、福岡県、愛知県のテレワーク実施率はまだまだ低いのが現状です。
長引くコロナ禍、豪雨などの自然災害時に備えて、テレワークのように社員がオフィス縛られることなく、どこでも業務を遂行できる体制を整えていくことは今度ますます重要になってくるでしょう。
テレワーク導入は単純に働き方の幅を広げるだけでなく、企業が抱える課題や問題点を明らかにするきっかけにもなります。行政の支援や世間の理解が得やすい今を好機と捉え、できるところからテレワークの導入を進めてみてはいかがでしょうか。

 

参照:
パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
https://rc.persol-group.co.jp/news/files/news-data.pdf

東京商工リサーチ「第5回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」
https://img03.en25.com/Web/TSR/%7B42379c82-bb66-466f-bbda-81aaa3487062%7D_20200616_TSRsurvey_CoronaVirus.pdf

総務省 令和元年版 テレワークの導入やその効果に関する調査結果
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd124210.html

大阪商工会議所「中堅・中小企業の経営状況・課題に関するアンケート調査」結果について
https://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/press/200626ckka.pdf

大阪商工会議所「中小企業のテレワークについての緊急アンケート調査」結果について
https://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/Iken_Youbou/200619telwk.pdf

大阪府「2019年度版なにわの経済データ」
http://www.pref.osaka.lg.jp/aid/sangyou/naniwa2019.html

経済産業省「福岡県の地域経済分析」
https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/bunnseki/47bunseki/40fukuoka.pdf

愛知県「あいちの概要」
https://www.pref.aichi.jp/ricchitsusho/gaiyou/structure.html

 

 

ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。