黒字倒産とは。原因を理解してキャッシュフローの重要性を知る| 経理を0から学ぶシリーズ 8
前回はキャッシュフローの必要性と役割を解説しました。今回のテーマはキャッシュフローと倒産です。
企業は、その規模の大小を問わず、さまざまな目的を達成するために利益の獲得を追求します。しかしながら、利益の獲得できず赤字(損失)を計上せざるをえない状況もあり得ます。
原材料価格の高騰、あるいは受注単価の伸び悩み、また為替の変動や株価の乱高下など、赤字転落の要因はいろいろとありますが、いずれにせよ、企業の体力を超えた損失を計上し続けると、企業が存続できなくなり「倒産」の状況に陥ります。
■そもそも「倒産」とは?
今では一般的な言葉となった「倒産」ですが、実は正式な法律用語ではありません。
企業の倒産情報などのニュースをリリースすることで知られる東京商工リサーチ社のWebサイトには以下の記述がありますので引用してみましょう。
“「倒産」は正式な法律用語でなく、東京商工リサーチが1952年から「全国倒産動向」の集計を開始したことで一般に知られるようになった。特に、1964年11月9日衆議院商工委員会で中小企業の倒産問題を東京商工リサーチの倒産データに基づいた国会質疑が行われ、「倒産」という言葉が普及した。”
また、「倒産」の定義については
“企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指す。「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大別され、「法的倒産」では再建型の「会社更生法」と「民事再生法」、清算型の「破産」と「特別清算」に4分類される。”
としています。
つまり倒産とは、「企業が経済的に行き詰まり支払能力を喪失し、その結果、事業の存続が不可能な状況」といえるでしょう。
■倒産件数の推移は減少傾向
先述した東京商工リサーチは2015年度の企業の倒産件数(負債額1,000万円以上)は8,684件(前年比▲9.0%)で、7年連続の倒産件数減少であったと発表しました。負債総額では、2兆358億円で前年と比べると8.9%の増加です。経済環境の改善や金融機関の支援などによって倒産件数そのものは減少しましたが、負債総額100億円以上の大型倒産の件数が前年よりも増加したことが負債総額の増加につながったと報告されています。
参照:「企業倒産25年ぶりの低水準」(時事ドットコム)
■黒字倒産はなぜ起きる?
倒産と聞くと赤字が積み重なった結果であるとイメージしがちですが、「黒字倒産」という現象もあります。
黒字倒産とは「利益は計上されているのに運転資金や手元に残っている資金が枯渇したため倒産」することを指します。つまり、キャッシュフローが尽きてしまったわけです。
「勘定合って銭足らず」という言葉があります。これは、帳簿上は利益が出ている(勘定合って)のに手元には資金が残っていない(銭足らず)というまさに黒字倒産を絶妙に表現したものです。
俗に言う「どんぶり勘定」な経営で経理などの管理業務が正常ではない状態だと黒字倒産が起きやすいともいわれています。本来入金されるはずの売掛金が取引先の倒産などで入金されないなどの突発的な理由もありますが、多くの場合は資金の管理と運用が計画的でないことが原因と考えられています。
倒産する企業にはその理由が存在します。日々の経理や会計といった業務が機能不全を起こしてしまうと倒産する可能性は飛躍的に高くなります。「どんぶり勘定」の会計処理では、さまざまな危険を背負い込んでしまい、挙句、倒産という憂き目に合うこととなるのです。
そのほかに黒字倒産にならない方法としては、入金サイクルを早くする、前払い制を採用する、自社の支払いを遅らせることなどが挙げられます。
「キャッシュフロー経営」という言葉があるように、どれだけの現金資金が手元にあるかは会社が存続していくうえで重要です。企業を分析するときは貸借対照表と損益計算書のみならず、キャッシュフロー計算書も確認しておきましょう。