人事部とは?人事担当者の仕事と役割とは?

人事部長と課長

「人事担当者の仕事にはどのようなものがあるのか」について考えてみたいと思います。

その前に人事部にはどのような役割があるのか整理してみます。
「人事部」とひと言で言っても、実は企業ごとに、あるいは人事部ごとに様々な役割を担っています。

「人事」と言えば、多くの人は、次のようなイメージをお持ちになられるのではないでしょうか?

・社員を採用し、人事評価する部署
・社員の人事異動を最終決定する部署
・評価結果に基づいて給与などの労働条件について取りまとめを行う部署

など。

では「全ての企業がこのイメージどおりの人事か」と言われれば疑問に思う人事担当者もいると思います。

例えば「人事評価」は、人事部が個別の社員の人事評価に絡むケースはありますが、絡まないケースもあります。

評価制度の設計によっては、評価対象となる社員が所属するライン内で最終評価がなされることもありますし、部門長会議の場で最終評価が加えられることもあります。

人事評価に人事部門が絡むかどうかは、それぞれの企業でどのような評価制度設計がなされているのかによるため、「社員を評価する」ことを役割としない人事部もあるのです。

これらは人事部の役割のひとつであって、人事部ゆえの役割ではありません。前置きが少々長くなりましたが、どのような組織であっても「人事部」共通の役割はどんなもなのか説明していきます。

 

■ どんな企業にも当てはまる「人事部」ゆえの役割とは?

企業とは、その保有する経営資源を日々の事業活動へ投入して利潤を追い求める存在です。企業が保有する経営資源には、「キャッシュ」「生産設備などの固定資産」「製品を製造する原材料」「取引先」「流通網」「マーケティング情報」そして「労働力」などさまざまなものがあります。これらをまとめて言ってしまえば、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった4要素に分類されるのが一般的です。

人事部とは、これら経営資源のうち、“ヒト”について最終的な役割を担っている部署です。違う言い方をすると、人事部とは“ヒト”という経営資源を最大限に有効活用するための機能を担う部署なのです。(※部署名の相違はありますが)

ちなみに企業によって人事部の構成には、「労務管理」を担当する独立した組織が存在しない事例(主に金融機関など)、本社の人事機能を補完するために事業部(ないしは事業所)ごとに人事担当組織が組成されている事例(主に製造業など)、各事業部内に企画担当組織があり、そこで人事労務管理の職務も担われている事例(主に総合商社など)など若干の違いがあります。

それは、“ヒト”という経営資源を最大限に有効活用していくかたちが企業や業態によって違うからです。この人事部のかたちには現在のところ「唯一無二の最適解」というものは存在していません。したがって、この「最適解」は企業の数だけ存在しえます。

しかし、かたちは違えど、本質は“ヒト”という経営資源の最大有効活用のために存在するのが「人事部」だということです。

 

■ 人事部に求める具体的な役割にはどのようなものがあるか?

一般的に人事部に求められることの多い役割(機能)を5つ挙げます。

1.採用機能
社員の募集と採用を担当する「採用」機能です。企業によっては、「全て社員の採用は人事が行う」ケースや「正社員採用は人事が行うが、非正規社員は各部門や事業所に委ねる」ケースもあります。また、「採用プロセスの初期段階は各部門が担うが、最終段階は人事が担う」ケースや「その真逆の採用プロセス」のケースもあります。
いずれにしても人事部は、全社の採用を管理し、ヒトの有効活用のバランスを取る機能を担っています。

2.処遇機能
社員の配属先、人事異動、昇進・昇格、昇給といった個々の社員の処遇を決定する「処遇」機能です。この処遇機能も人事部が具体的にどのような役割を担っているのかは企業ごとに特徴があります。

3.人事制度の企画・立案
「人事制度の企画・立案」機能です。社員の処遇決定の基準となる評価制度や報酬制度の構築をします。“ヒト”の最大有効活用という点では非常に重要な機能で、企業の特徴がはっきり出ます。人事制度がマッチしていないと社員のモチベーション低下や離職率の悪化という事態を招きます。

4.労務管理機能
企業全体の賃金管理を行う「労務管理」機能があります。大企業においては労働組合との折衝も重要な役割です。
“ブラック企業”が社会的な問題として取り上げられるように、長時間労働による労災認定のリスクや民事上の責任論が高まってきている昨今においては、企業として安全配慮義務を果たしていることを担保しておくことが求められています。
企業独自の残業時間基準を設けて、その基準を超過する残業を行っている社員については個別面談を実施したり、対象社員の業務内容の棚卸、部門長からの意見聴取など、「リスクヘッジ機能」も併せ持つようになってきており、単純に労務管理をしているだけではなくなってきています。

5.能力開発機能
社員への研修制度を構築し、「能力開発」の機能が挙げられます。社員とは“ヒト”という企業が最大の利潤を達成するための経営資源ですから、この経営資源が陳腐化しないように能力開発に投資する機能を担っています。
人事部は、たとえば企業が固定資産の陳腐化を防止するため適宜新規の設備投資をするのと同様に“ヒト”に対して能力開発という投資を行います。

機能と部門名称

 

■ なぜ人事部が必要なのか?

研修風景

先述しましたが、人事部の本質は“ヒト”という経営資源の最大有効活用です。
5つの機能は、それを達成するための手段です。では、なぜ「人事部」を設置することが有効なのかについても少しふれおきましょう。

1.人事情報の集約化
人事部門の存在によって、人事情報の集約化を図ることができるのがメリットです。
企業は組織が大きければ大きいほどライン内に人事情報が留まってしまいがちで、“ヒト”の有効活用の最適化を図る機会損失を招くこととなります。つまり、人手が足りない部門や新規部門への人事異動を素早く計画するためには全社の人事情報の集約化が重要となります。
ちなみに人事異動を行うための権利、人事権を持っているのも人事部であるケースが多いです。

2.ライン部門に委ねる非効率性
次に、“ヒト”という経営資源をライン部門に委ねる非効率性が挙げられます。
ライン長の仕事は“ヒト”だけではなく、むしろ“モノ”“カネ”といった経営資源への責任も担っています。したがって、“ヒト”という経営資源の活用については必ずしも得意ではありません。これは特に能力開発や労務管理という人事機能を考えるときに重要となります。

もちろん、ライン長がOJTを通じてヒトの育成に大きな役割を果たしている点は否めません。しかし、効果的なOJTプログラムを企画したり、これまでプレイヤーであったライン長をトレーナーとして育成していくことは、やはり人事部の重要な役割なのです。

3.モチベーション管理
最後に“ヒト”のモチベーション管理のためにも人事の機能は重要となります。
ライン長は部門業績の最大化が最も重要なテーマとなりますから、ときとして部下の育成の優先順位を下げてしまい、あたかも部下を自分の手足のように「小間使い」的に使用することが起こりえます。
組織内で目標を失わずに、成長する人材もゼロではありませんが、ほとんどが自分の役割を見失いモチベーションの低下をまねく恐れがあります。定期的なチェックを行い、社員が働く喜びを見失わないようにすることは人事部の重要な役割になります。これは特に処遇決定機能や人事制度の企画・立案の機能を考えるときにも重要になります。

ライン長の人事機能のサポートも重要な役割ですが、それとは独立して人事部が主体となって、ラインの利害を超えて全社的観点からヒトという経営資源について関与することは経営資源の有効活用にとって欠かすことのできないポイントなのです。

 

■ 大企業と中小企業における人事部門の機能や人事担当者の仕事の違い

人事部の目的や機能についてこれまで見てきましたが、こうした人事部門の機能を具体的に担うことになるのが、人事担当者ということになります。
人事部門の機能を5つの機能に分類しましたが、人事担当者の機能も明確にこの5つに分類できるか、というと必ずしもそうはいかないのが興味深いところです。

特に大企業と中小企業とでは、企業側から期待されている役割は大きく異なっていることが一般的です。

たとえば「採用」ですが、

・新卒、中途、パート・アルバイトで担当がそれぞれいる
・採用プロモーション、面接管理で担当がそれぞれいる
・内定者フォローや入社後フォロー担当がいる

など

大企業ともなると採用数も多いため、効率良く採用を行うために役割が細分化されている場合もあります。一方、中小企業では、採用に関わる業務をマルチにこなすことを要求されます。また、「能力開発」も要求されるケースもあります。
そこには業種関係なく組織規模から派生する人事機能の相違があるからです。

そこで、次回は、今回見てきた人事部の存在目的や機能の側面を踏まえて、人事部門に期待される役割の組織規模別の傾向や人事担当者の仕事についてもう少し詳しく考えていきたいと思います。

ライタープロフィール

横井 祐

横井 祐

特定社会保険労務士兼DCプランナー

特定社会保険労務士、DC(Defined Contribution Plan 確定拠出型年金)プランナー。自動車メーカー系総合商社、ベネッセスタイルケアを経て2010年ヨコイ・マネジメントパートナーズ設立。 2015年度厚生労働省過重労働対策セミナー&労働条件相談ホットライン検討委員会メンバー。 介護保険、人事マネジメントに関する書籍等の執筆、社会保険労務士業、経営コンサルティングサービスなどで全国各地の顧問先のお客様と日々奮闘中。