採用担当者に求められることは良い人材を採用すること。目的別プロセスとコストを理解する|人事担当者の仕事と役割 2

採用面接

■人事部の目的は、人的資源の有効活用

前回の「人事部とは?人事担当者の仕事と役割とは?」を踏まえて、本稿から人事部門の具体的な5つの役割について説明しています。

まずは前回の人事部門の役割を簡単におさらいします。

人事部門の目的と手段
上記の図表を見てください。人事部門の役割は、経営資源たるヒトの最大限の有効活用であり、どの企業においても共通する目的です。

そして、それを支える役割(機能)として、以下の5つの機能が挙げられます。

1. 採用機能
2. 処遇決定機能
3. 人事制度の企画立案機能
4. 労務管理機能
5. 能力開発機能

この5つの機能は、それぞれの企業によって、人事部門の関わり具合や権限の度合いに違いがあります。つまり、多くの企業は、こうした機能を人事部門のみに委ねるのではなく、人事部と事業部とが互いに協力しながら、それぞれが相応しい役割を分担しあうことが一般的です。

今回は、おもに採用機能について、人事担当者がどのような業務を担っているのか、人事部門と事業部門とが、どのように協力しあっているのかについて説明します。

 

■採用が求められる場面とそのプロセス

①採用活動が求められる場面
採用担当者が採用活動を行う場面は大きく以下の3つと、計画的に行う採用と非計画的に行う採用に大別することができます。

3つの採用

②代表的な採用プロセス
それぞれの採用場面ごとに採用プロセスは異なります。

まずは新卒採用におけるプロセスの代表例は次のとおりです。

【新卒採用の面接プロセス例】
リクルーターまたは採用説明会によるファーストコンタクト→筆記試験→1次面接(人事担当者&事業部門担当者)→2次面接(人事採用責任者&事業部門所属長)→役員面接

一方、中途採用は同様のプロセスをたどるとは限りません。また、欠員補充採用においては、むしろ新卒採用とは全く異なる採用プロセスをたどることが一般的です。

たとえば、

【中途採用の面接プロセス例】
書類選考→役員面接(1次面接)→配属先の所属長面接(2次面接)→人事面接(最終面接)

といったプロセスを採用している企業も存在します。

なぜ、このような採用プロセスに違いがあるのか、理由はいくつか考えられます。

新卒採用においては、それぞれの企業で実際に働く先輩社員がリクルーターとして学生時代からつながりのある学生にコンタクトをとることによって、内定辞退を避ける歩留まりの確保が期待できます。さらに、同じ大学やサークル出身者を採用することによって、人間性や能力の担保にも資する面が挙げられます。

これに対して中途採用にみられる、役員が1次面接を実施する場面においては、創業期の企業を知る役員がまずは自社の組織風土に合致する人材かどうかを見極めたうえで、具体的なスキルチェックを現場部門に委ねるといった理由が考えられます。
(もっとも、1次面接を役員が実施する、という採用プロセスは採用人数がある程度限られる企業では現実的ですが、そうではない場合は実際の運用は難しいかもしれません。)

また、何より採用までのスピードが求められる欠員補充採用においては、

【欠員補充採用の面接プロセス例】
1次面接(配属先責任者&人事責任者)→2次面接(配属先責任者&人事責任者)

といった例もありえます。

企業にとって、採用とは非常に大きな意味を持つ意思決定です。たとえば、人件費比率は業種により違いはありますが、部門業績を考える上では非常に大きなウェイトを占めています。このため、採用のプロセスには一応のルールが敷かれているのが通例ですが、個々の採用場面ごとにこれが柔軟に見直されることはやむを得ないのです。

同じ企業であっても、採用の場面によって採用プロセスには違いが生じます。しかし、どのプロセスでも採用担当者に求められることは「良い人材を採用できたか?」という1点です。

 

■採用担当者は表に出なくても採用への責任がある

採用プロセスが違うのに、全て「良い人材を採用できたか?」の結果の部分だけ採用担当者に求めるのは酷である、という意見も予想されます。

確かに、人事部門の採用担当者が採用プロセスにほんとど関与していないケースもあり得ます。しかしながら、人事部門の採用担当者には、プロセス上は直接顔を出さないとしても、やはり裏側で一連のプロセスをリードする役割が期待されているのです。

なぜなら、採用は選考のプロセスよりも前の段階からスタートしているもので、採用担当者のスキルによって、その後のプロセスに大きな違いが生じる可能性があるからです。

例えば、

広告媒体関連
・広告媒体を使うとしてどの媒体を使うのか?
・出稿先の広告媒体が決まったとしてどの程度の費用をかけられるか?
・採用広告に登場させる社員を誰にするか?インタビューの内容はどうするか?

人材紹介会社関連
・利用するとしてどこに依頼するか?
・複数の紹介会社へ依頼しても工程管理に心配はないか?
・紹介会社各社の成功報酬は何%か?
・個々の紹介会社の強み(管理部門系に強い、クリエイター系に強いetc.)は何かあるか?
・個々の紹介会社の営業担当者との関係は良好か? etc.

採用とは、候補者を適切に評価することだけではなく、自社にあった人材をどのように集めてくるかもプロセスの一部として考えることができます。そういった点では、人事部門の採用担当者が選考プロセスにあまり関与していなくとも、「良い人材を採用できたか?」ということに対して責任はあるといえます。

 

■採用活動のコストを可視化する

採用の各プロセスにおけるコストを可視化することも、人事部門の採用担当者の責任のひとつです。これは自社の今後の採用活動を効果的に展開していくうえで非常に重要な要素となってきます。

ある大手人事部門の採用担当者は、「採用CPO(Cost Per Operation)」というものを作成しています。これは、個々の採用広告媒体やプラン、広告を出稿した時期などによって採用プロセスごとにどの程度の費用が投下されているのかを指標化したものです。

この採用CPOを、広告媒体を例に簡単に図示をすると、次のようになります。

採用CPOシミュレーション

この場合、採用目的人数は1名に対して、予定どおり1名の入社につなげることができました。しかもラッキーだったのは、本来は1名の採用でよかったところに2名の内定を出せたということは、甲乙つけがたい優秀な人材に巡り合うことができたのかもしれません。
(または、是非とも採用したい1名は他社に奪われる可能性が高いため、念のためもう1名の内定を補完的に実施した、ということもあるかもしれません。)

この採用CPOは、基本的には各オペレーションにおいて、獲得単価が安価であればあるほど良く、入社者数が初期の目的どおりとなれば一応は成功だということができます。

しかし、いかにエントリー件数が多かったとしても(例えば1,000名)、書類選考通過者が極僅かな結果となってしまった場合は(例えば10名)、エントリー件数獲得のためのCPOは上記の例でいくと、わずか\500/人となりますが、1次面接に送ることができたCPO(書類選考通過者数CPO)は、\50,000/人に跳ね上がります。

また、人数が多くなるということは、それだけ工程管理に割く労力が増すということにもなりますから、いたずらに件数ばかりを稼ぐということは必ずしも良い結果には結びつかないことも少なくありません(事実、広告内容の書き方などによって件数の獲得を一定程度、伸ばすことは可能です)。

このように、採用の面接プロセスがいかなるものであろうとも、採用担当者のスキルによって結果に差が生じることがあります。さらにいえば、面接を担当する社員に対しても、面接の心構えや注意点を喚起し、優秀な人材が他社に流れないように「面接官としての教育」を行うことを求められる場合もあります。

以上、採用機能について説明しましたが、どんな採用プロセスであろうと、また権限の付与であろうと、「採用担当者は表に出なくても採用への責任が必ずある」のです。

次回は「処遇決定」「人事制度企画立案」「能力開発機能」を順に説明します。

ライタープロフィール

横井 祐

横井 祐

特定社会保険労務士兼DCプランナー

特定社会保険労務士、DC(Defined Contribution Plan 確定拠出型年金)プランナー。自動車メーカー系総合商社、ベネッセスタイルケアを経て2010年ヨコイ・マネジメントパートナーズ設立。 2015年度厚生労働省過重労働対策セミナー&労働条件相談ホットライン検討委員会メンバー。 介護保険、人事マネジメントに関する書籍等の執筆、社会保険労務士業、経営コンサルティングサービスなどで全国各地の顧問先のお客様と日々奮闘中。