人事部門の機能のひとつ「処遇」は事業部との調整で決まる| 人事担当者の仕事と役割 3

処遇協議中

採用の目的は良い人材を採用すること。目的別プロセスとコストを理解する』では人事部門の5つの機能の1つである「採用機能」についてお話ししました。今回は、「処遇決定」を見ていきましょう。

 

■社員の処遇は、人事部と事業部の調整によって決定される

人事部門の機能である「処遇決定」とは、端的に言ってしまうと社員の給料(昇給や昇格)や役職(昇進)を決定する、ということになります。

 

■役職の決定(昇進)について

ご承知のとおり、それぞれの社員の昇進決定は、その社員が所属している部門の部門長や所属長(課長)も交えて決定されることが多いです。そのため、人事部門というよりは部門長会議ないしは課長会議が決定的な役割を担うことも少なくありません。あるいは、課長クラス以上は部門長会議の合議体で決定するが、係長クラスについては部門内で部長と課長で決定することもあるでしょう。

役職の決定には、勤続年数や、等級管理を行っている企業であれば「3等級としての勤続が3年以上」といった滞留要件が加味されることがあり、こうした昇進要件を満たしている人材のリストが人事部門から各部門へと提示されることがあります。

各部門の部長や課長はこうしたリストをもとに、係長として誰を昇進の対象とするか検討し、部門長会議においては誰を課長として昇進させるべきか検討を行うわけです。

リストには、勤続年数といった形式的な要件も表示されますが、これまでの人事評価の結果といった定性的な評価結果も表示されていることがあります。部長や課長はリスト上から昇進対象者をピックアップすることが一般的ですが、必ずしも人事部門からリストアップされた人材ばかりが昇進の対象となるわけではありません。ときに部長や課長は一般的な昇進要件からは除外されている人材であったとしても、特に有望な社員については昇進の対象者としてリスト外からピックアップすることもあります。

こうした“いわゆるサプライズ人事”は、人事評価が硬直的な組織においてはなかなか現実的には難しいわけですが、部長や課長は、実際の働きぶりを間近に見て、リストには現れない優秀な人材の抽出を可能にします。こうした意味で、昇進に関する人事政策には、人事部門ではない事業部門が果たす役割は非常に大きなものになります。

「業績にはカネ(給料)で報いる。徳にはポジションで報いる」ということが言われることがあります。“徳(人徳)”は、必ずしも形式的な要件として見えませんから、ある意味で非常に合理的です。

しかしながら、こうしたサプライズがたくさんまかり通ることは、人事制度に対する社員からの信頼を揺るがすことにもなり、度を過ぎると、社員のモチベーション管理に影響し、業績に対する達成意欲を削ぐことにもなりかねません。

人事政策とは、もともと不公平な要素を持つもの(極端な例を挙げると、社員が全員社長になれるわけではありません)ですから事業部門が推す人材が本当に優秀であれば、その人を重用するのが企業全体からみれば最適解となります。

このため、部長と課長の部内における判断結果や部門長会議における判断結果は、最終的には人事部門と協議がなされ、人事部門はその判断結果に合理性があるかないかについてのチェックをいれることになります。ここで、事業部門の決定ウェイトが強いか、人事部門の決定ウェイトが強いかは、各企業の特徴が現れるところです。そして、決定された昇進結果に基づいて、昇進者にはそれぞれのポジション毎に定められた役職手当と権限が付けられることが一般的です。

 

■給料の決定(昇給・昇格)について

昇給と昇格は同じように扱われることもありますが(企業によっては昇進と昇格を同義に扱うこともあります)、両者はそれぞれ異なる性格があります。処遇決定の場面においては、昇給は昇格と比較してハードルが低く、昇格は昇給よりも厳格な要件が求められることが一般的です。

昇給とは、同一の等級内において号棒が上がることを意味し、昇格とは等級そのものがチェンジすることを言うためです。

昇給昇格の例

昇給は勤続年数や直近の評価結果に応じて、ある程度、機械的に決定されることが通常です。企業としても、総人件費管理は“昇給”にとどまる限りは比較的容易であるためです。

これに対して、昇格は等級が変化することになりますから、昇格時の人件費も想定外の自体が起こりえます。たとえば、上の図表の例でいえば、従来、1等級1号棒であった社員を2等級へ昇格させたい、となると人件費は基本給だけで月額2万円も上がってしまうことになります。企業規模によっては、たかだか2万円と評価されることもあるでしょうが、それでも昇格人事が大量に実施されてしまうことになると、全社で考えた場合の総人件費は大きく影響を受けることになります。

このため昇格人事には、昇給人事以上の厳格さが求められることが通例なのです。昇格のためには、昇給要件+αの優れた功績、業績が求められるのはこのためで、こうした昇格評価については、総人件費を管理する人事部門との協議によって最終決定されることが多いことにも頷けます。

次回は、「人事制度企画立案」の機能について説明します。

 

ライタープロフィール

横井 祐

横井 祐

特定社会保険労務士兼DCプランナー

特定社会保険労務士、DC(Defined Contribution Plan 確定拠出型年金)プランナー。自動車メーカー系総合商社、ベネッセスタイルケアを経て2010年ヨコイ・マネジメントパートナーズ設立。 2015年度厚生労働省過重労働対策セミナー&労働条件相談ホットライン検討委員会メンバー。 介護保険、人事マネジメントに関する書籍等の執筆、社会保険労務士業、経営コンサルティングサービスなどで全国各地の顧問先のお客様と日々奮闘中。